トルデジアン レポート #13 無情なる結末編 Tor des Geants
トルデジアン レポート #13 無情なる結末編
ここはGRESSONEYSAINTJEANライフベース
時刻はAM4:50・・・
どれぐらい寝ていたのであろうか。
まさしく泥のように眠っていた。
目がさめると、隣で寝ていたKさんの姿がない。
AM5:00頃にレースについてアナウンスがあるため、メインホールへ移動。
仮眠室へ入りきらなかった選手が、至る所で横になっている。
昨夜のアドバイスがなければこうなっていたと思うと感謝しきれない。
アナウンスが流れるまで朝食をとることとした。
ここのメニューは豊富だった。
生ハム、パン、サラミ、チーズ、イモはすでに定番メニュー。
加えて、このライフベースでは野菜が豊富。
レース中に野菜が取れないので、野菜ジュースやサプリメントをデポバッグに入れる人が多くいる。
ここで野菜をモリモリ食べた。
クッキーやパイなどの甘い物もある。
エスプレッソマシーンやビールサーバー、ワインは大変お世話になりました。
とりあえず軽く朝食を食べることに。
そうだ、ワインもいただかなきゃ
AM7:00を過ぎてもアナウンスが流れない・・・
とりあえず寒いので、若干の矛盾を感じるが、スープとビールを・・・。
スタッフ達が慌ただしく話し合っている。
せっかくの貴重な時間なんで、シューズとソックスを乾かすことにした。
各ライフベースに髪を乾かすドライヤー?が設置されてるので、ここで濡れたシューズやソックスを乾かすことにした。
もう、臭いのなんの!
よく考えたら足元には牛のナニの中を通ってきたのだから仕方ない。
シューズも乾き、出発の準備も整い、メインホールへ戻る。
まだアナウンスは流れない。
しばらく待っていると、会場中央がザワつきはじめる。
何を言っているかサッパリわからなかった・・・
が、何を言ったかはすぐに理解できた・・・
頭を下げ落胆する者・・・
両手をあげ納得してない者・・・
サポートメンバーや応援に駆けつけた家族達が、選手をなだめ抱き合っている者・・・
そこに説明は不要だった。
そう、ここでレースが終わったんだ。
ただそれだけだ。
この先どうなるかもわからない。
いつ迎えのバスが来るのかも、どうやってCourmayeurに帰るのかさえも。
周りの日本人から聞いたのは、いつ来るかわからないバスを待つか、Courmayeurに帰りたい者は勝手に帰っても良いというアナウンスがあったみたいだ。
もちろんバスを待つことにした。
日本人選手達で、補給食の柿ピーとビール、ワインをたらふく飲んで、打ち上げが始まる。
みんなで、ここまで来れたことを讃え合い、そして自然には勝てないよ〜と言って慰めあったりした。
大会主催者側の動きは迅速であった。 時間も経たない間に、Courmayeur行きの大型バスを、何台もここ GRESSONEYSAINTJEANに運んできた。
準備の出来た者から順に会場を後にし、大型バスに乗り込む。
12時間ぶりに外に出る。山には霧が立ち込め、大会側が中止を決定した理由が伺える。
しかし このゲートを抜け、Courmayeurに行きたい気持ちは収まらない・・・
(photo by TDG HPより)
バスに乗り込むと、すし詰め状態。
汗クサい臭いで鼻がおかしくなりそうであった。
パンパンに詰め込まれたバスはGRESSONEYSAINTJEANを後にする・・・
Courmayeurに帰る途中から、陽が射してきて、青空になってきた。それと共にこみ上げる感情・・・
「なぜレースを中止にしてしまったんだ」
「事故が起こったり、死人が出たらマズいだろ」
「でも・・・」
「こんなに晴れてきたのだから、もう一度再開したらいいだろ」
「大会側も苦渋の決断をしたんだ」
「でも・・・」
「なんで今年なんだ」
「自然を相手にしてるんだから仕方ないだろう」
「でも・・・」
そんな自問自答を延々繰り返していた・・・
どんなに、中止になったことに対する肯定的な言葉を探してもすべてが「でも・・・」という言葉に勝るものがみつからなかった。
抑えきれない想いに涙が溢れた。
このレースに向けての準備や練習。
会社の同僚が背中を押してくれたこと。
友達の温かい言葉やメッセージ。
トレイルランニングの集大成として挑んだレース。
天気が悪いからダメだった。
生きて帰ってこれたからよかった。
確かに大事なことだと理解しているつもりだ。
しかし、その一言で自分を納得させられるだけの理由には至らなかった・・・
きっとこのバスに乗っている者は皆それぞれ想いは違えど、納得している者はいないだろう。
だからこそサングラスをかけ平静を装った。
Courmayeurに到着すると、また雨が降りはじめていた。
会場では今後どうなるかも決まっていない様子・・・
とりあえずホテルに戻ることにした。
ホテルに戻り部屋に入ると、イスに座ったまま何もする気が起こらなかった。
完走して飲む予定であったビールを、冷蔵庫から取り出し栓を抜き、ゆっくりとノドに流し込む。
身体は疲れているはずなのに眠れない・・・
しばらくするとジェラート食べに行こうとお誘いがあり、気を紛らわすためにも準備する。
途中、まぼろしとなったゴールゲートでポーズを決める。
神様の悪戯なのか、皮肉にもイタリアの地に来て、一番の表情をモンブランはみせるのであった・・・
やわらかい陽の光のなか、私のTor des Geantsが終わった。
先に全員でゴールしようっていう、大会側から全員でゴールしようという温かい計らいがあった後に、受付場所のスポーツセンターで、セレモニーが開催。
名前を下位選手から呼ばれて、順に壇上に上がり、完走Tをもらいました。
(ゴールで着用予定だった着物と雪駄でセレモニーに参加のトダジュン。大歓声を受けたとのこと。本人談)
トルデジアン レポート #1 プレエントリー編
トルデジアン レポート #2 エントリー編
トルデジアン レポート #3 エントリー後の手続き
トルデジアン レポート #4 緊急事態発編
トルデジアン レポート #5 旅立ちの夜編
トルデジアン レポート #6 レース前日受付編
トルデジアン レポート #7 装備・補給編
トルデジアン レポート #8 運命の朝編
トルデジアン レポート #9 1st Stage
トルデジアン レポート #10 2nd stage
トルデジアン レポート #11 3rd stage
トルデジアン レポート #12 4th stage
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