2014年09月27日
上州武尊スカイビューウルトラトレイル 「第1回川場村 山田昇メモリアルカップ」に行ってきた。
夜明けの空に昇る雲一つない新月間近の暁月は細長く、丸く月の輪郭を綺麗に映し出していた。頭上には、村の街灯よりも力強く輝く満点の星空が広がり、凛とした空気の綺麗さが際立っている。
ここは群馬県川場村の役場前。9/21の朝5:00に夜明け前の静けさの中、総距離120km 累積標高8300mを走るために約500人のトレイルランナーが集まった。
いつかヨーロッパのレースに出てみたい。ボクはそう思うようになっていた。
今回、この「上州武尊スカイビューウルトラトレイル 第1回川場村 山田昇メモリアルカップ」(以下、「YNMC」)には、ポイント獲得が目的でなくて、欧州に似た長い登り下りを走ってみたくてエントリーした。
チームチョキからボクとコージ君、ランオアダイからは神山さんとかのっちが出場。
群馬県川場村がスタート・ゴールで、自宅から京都駅経由でおよそ650kmと関西からはかなり遠方。場所をわかりやすくいうとガーラ湯沢の手前、軽井沢のさらに向こうといった感じ。
遠すぎw
この大会は1回で4ポイントを獲得できるため、安易なエントリーが多かったのか、事前の試走で死亡事故が発生したためか、めずらしくエントリーキャンセルシステム(フィー全額返金)が導入されたことは記憶に新しい。
この大会は元々、登山家山田昇氏の記念大会で大きな荷物を背負うボッカ大会だったけど、数年前からトレイルラン大会に衣替えしたみたい。そして、今年から120km、60km、30kmのレースにリニューアルした大会。
前日のブリーフィングは受付場所&スタート地点の川場村でなくて、隣町の68km地点のオグナほたかスキー場(ドロップポイント)で開催。宿は当然、川場村なので車で30~40分かかって話を聞き、また宿に帰ってくるという非常に効率の悪い日程になっている。
コース前半はヨーロッパな山々に対応できるような2発の大きな山(西の剣ヶ峰、沖武尊山)、後半は鏑木さん曰く里山が連なる山々と。
ついつい、コース図を見ると前半の剣ヶ峰と上州武尊山に目に行きがちだけど、100km超えてからのラストの山の大きさ、ギザギザな標高差と激下りは公表された時点から要チェックなポイントであることはわかっていた。
フラットなコースは見あたらない。登るか下るしかない120km
ーーーーーstart〜A1川場スキー場第四駐車場〜A2宝台樹スキー場(29km)-----
スタートは9/21(日)の朝5:00
当時は寒くもなくファイントラックのフラッドラッシュパワーメッシュの上にTシャツとアームスリーブで十分。
事前にネットで調べると前半が足場が悪そうだったのでソックスをドライマックスにした。
スタートして淡々とダラダラとした登り坂を上がり、A1を過ぎると西の剣ヶ峰の登りに入る。
周辺は登りを歩くランナーが多かったのでジョグしながら長い長い登りをひたすら登ってパスした。
秋が訪れている気配が感じられる登りパートは紅葉と絶巓(ぜってん)の上は青い空が広がっていた。
山頂は目の前
剣ヶ峰の頂上までは案外直ぐに到着できた。
頂上を過ぎると地図でわかるとおり、遊園地のフリーフォールのような垂直な下りとなる。
黒土がヌルヌルで木の根っこばかりでとても下りづらい。
激下りパートは約1kmも続き、その後、A2に向かう途中に林道が出てくる。
この林道は雨が降れば川底になるような場所で丸い石がガレているところ。
ここで足を捻らない程度に小走りで飛ばしていると・・・。
まさかの木の根に足をひっかけてしまいダイブしながらのヘッドスライディング。
後続ランナー2~3人が立ち止まってくれるくらいにヤバイ転け方でした(笑)
このとき、両手を前に出してしまい思いっきりガレ岩に突き指。左薬指は紫色にふくれあがり、以降は左手を太ももに手を当ててパワーウォークできなくなる。
ーーーーーA2宝台樹スキー場〜A3武尊牧場スキー場(59km)-----
A2エイド(宝台樹スキー場:みなかみ町 スカイビュートレイル60のスタート地点)に到着して、次の武尊山に登るためにエイド食をたくさん補給する。かなり気温が上がりそうだし、この先30kmはエイドなしのため、水は多めに持っていくことにした。
沖武尊山までの登りは、長い舗装路から林道に入り、沢登りとなる。沢では足が濡れ、その先の路面は泥んこの状態。
雨が降っていれば、この川は渡れないし、泥の道はどうなることかまったくもって想像できない道。
沢登りの不規則な運動で意外に疲れた自分があった。
途中に手小屋沢避難小屋に合流、ここからは一般ルートになるけれども、鎖場が連続する箇所。あまりにも危険なので、今回ハシゴを5カ所かけてくれているのは正直助かった。
ちなみにハシゴは1台に1人のため、待機する必要あり。
加えて、ハイカーさんらが下りられてきたので、ハイカーさんらを優先させて少しだけ待ったが、全然問題ない程度。
この場所は鎖でも十分登れるだろうけど、この先の体力を考えるとハシゴが正解。山岳会の方々がここまでハシゴを担ぎあげてくれたことに本当に感謝。
沖武尊山からみた剣ヶ峰 稜線を走れば直ぐなのにコースは一度下まで下りて登り返す。
沖武尊山の山頂を超えて、下りにも2カ所のハシゴがあり。ここは垂直下降の鎖場なので、ボクの技量ではハシゴがなければ降りれない可能性が高かった。本当に山岳会の方に感謝。
ここからずっと長い下りを走る。
A3の武尊牧場までは走りにメリハリ付けることができずに16:00着。丁度、この時に60kmの関門が閉められたところだった。
-----A3武尊牧場スキー場〜A4オグナほたかスキー場(68km)〜A5赤倉峠〜A6桐の木平(85km)ーーーーー
ここから先もコースはドカンと下らせ、あいかわらずフラットなしでドカンと登り返すの繰り返し。
そうこうしているうちに明るいうちにA4オグナほたか(68.2km)に到着。
ここでドロップバッグを拾い、ドロドロのソックスから綺麗なドライマックスへ交換。シューズも後半用にHOKA STINSON EVOに履き替えた。
また、夜間用にウェアをフラッドラッシュパワーメッシュからオンヨネのブレステックPP(長袖)に変更。
オグナほかたエイドを飛び出すと、すでに真っ暗闇のトレイルと変わっていた。結構、風も吹いていて寒かったけど、Buffを首に巻いていたからか、ZENスーパードライブを飲んだからか直ぐに体温は戻った。
A5の赤倉峠を過ぎてから千貫峠というピークが前日のブリーフィングに説明されていた10カ所位連続するノコギリ状のアップダウンを繰り返すトレイルで、かなり体力を消耗してしまう。
オグナほたかを出てからは周りに誰もおらず一人旅が続いており、人恋しくなった時にA6桐の木平(85km)に到着。
ここは暖かいうどんがあるが、次のエイドまで12.7kmなのでいらないと思った。
が、足裏のマメが気になってたので処置するついでにうどんを3杯頂くことに。
水は夜間なので500cc+少しだけ持って出発することにした。
まさかこの次の12.7km区間が長い旅になるとは思いもよらず・・・
-----A6桐の木平〜A7太郎大日堂(98km)-----
左手の薬指は腫れてきており、突き指の酷い状態だったけど、ストックを一度握れば手の形を変えなくていいので辛くなかった。
どちらかというとここまで気づかなかったが、剣ヶ峰の下りで転倒した際に右人差し指の付け根を打っていたようでこの辺りで痛み出してきてた。
A6を出たのが22:40。前後ランナーはなし。
A6を出て、舗装路の登り坂を過ぎると前方はキャンプ場だった。
エイドで10分程度休憩して元気だったので下を向きながらゆっくりジョグしていたと思う。
キャンプ場の中に入ってきて、標識が少なくなってきた。
でも、目の前には黄色のテープとスカイビュートレイルの矢印看板があるのでそのまま突き進む。
この時に何度か振り返ると後ろから一人のランナーが付いてきているのが見えた。追いつかれないように前に進む。途中で何度もおかしいなと思うが、黄色のテープ(このレースは上州武尊と書かれたオレンジテープと単なる黄色のテープの二つが誘導テープ)で、明らかにテープの付け方がこのレースの物だったので、信じて突き進んだ。
確かにライトに反射するオレンジのマーキングはなかったけど、国有林だから規制でもあるんだろうと思い込んでいた。
4km程真っ暗の森の中を走り、出てきたのは突き当たりの林道。
左が登り、右は下り。左に黄色のテープがある。右にはない。なので、当然ながら左を登る。丁度A6~A7は一度登って、下って、また登ると頭に標高図をたたき込んでいたので、このルートは最後の登りなんだと思ってた。
無機質な林道をジョグっていると前方から二人組が下りてきた。話を聞くとこのコースは間違っているのではないかと。
いや、黄色のテープが目の前にあるから間違っていないはずだと豪語するボク。
そうすると後続の人がやってきてきたのでボクはトボトボと林道を上ることにした。
振り返るとすでに3人の姿はなく真っ暗闇の中、頭上にはスタート前に見たのと同じ満天の星空の下でボクだけがポツンとなった。
「に、2キロだけ進んでダメなら戻ってこよう・・・(涙)」と思って勇気をもって走り出す。
と、ふと途中で気がついた。
この大会は1km毎に累積距離看板が立っている。でも、A6を出てから一度も見ていない。でも、スカイビュートレイルと書かれた矢印看板は何度も見ている。(計4つあった)
きちんと大会の名前の書いた看板があるということは正規ルートだ。と自分に言い聞かせる。
そういえば、昨日のブリーフィングで鏑木さんが累積距離看板は事情があって数個だけ立てていないと言っていたことを思いだした。ここまで既に5kmは登っている。連続5つの看板がないってことはないはずだと思って。急に嫌な予感がしたので、踵を返し来た道を下る。すると別の2人組に出会った。(これでボクを合わせて6名はこのコースに来ている)
事情を説明すると、とりあえず林道を上ってみようということになり再度登る。
黄色のテープはやはりある。ただ、段々とテープが小さくなったりと今までテープと雰囲気は違う。1kmほど登って、やはり違うだろうと思うようになった。
林道の出合いまで、再度下った。なお、そこから林道を下ると黄色のテープはやはりない。
すなわち考えられることは2つ。
仮に下りにテープがあれば登り下り両方にコースがあることとなる。それは明らかにおかしいので、この黄色のテープは偽物と判断できる。
しかし、実際には下りにはマーキングがなくて登りにある。ということは登りが正解で正規のルートではないか。
もう1点は看板はあるが、そもそもこのコースは間違っているのではないかという全否定な考え。
確かに3人で戻って看板は全員で目視確認もした。川を渡渉するロープにも黄色のテープがかかっているが・・・
同じ境遇の1人が発言した「後続者が誰も来ないのは明らかにおかしい」という言葉にゾクッっとした。
後続者が来ないのは何らかの事情があるからだという意見を尊重し、一度A6に戻ることにした。
で、帰る途中にふと気がついた。
このコース明らかに途中まで設定したコースが放置されたものか、または車道が近くに見えることからエスケープ用の道ではないか。
真っ暗闇の山中で、黄色テープだけで戻るのはかなりの混乱がつきまとう。逆走しているので、分岐でかならずテープが見えるわけではない。しかもこのレース全域は熊が出るため気味が悪い。
結局、5km戻っても誰にも出会わない。
ようやくA6付近に帰ってきたところで、ボクがまっすぐ突き抜けた横に左にそれる矢印が立っていた(愕然)
この時点で時計は日付を回っており、A6出発からのロスト時間は計3時間38分を経過していた。
さあ、気合いを入れて行くぜ!ってこんな時にならない。自分のバカさ加減で4時間近く山中を彷徨っていて、あと35kmをここからプッシュできる精神力はさすがに持ち合わせていない。
もうやだーと半べそかきながら、たったの12.5kmを7.5時間もかけて最終エイドのA7の太郎大日堂に到着。
最後は水も枯れ、ほんとギリギリ。
ロストしていた部分(距離10.37km、3時間38分)
-----A7太郎大日堂〜ゴール(119km)-----
ロストというか半分遭難から復帰して、最終エイドまでやってくると空が明けだした。
すでにここで24時間経過…残念すぎる。何やってるんだか。
最終エイドからゴールまで約22kmと長丁場なので、しっかり食べようと思うが、寒くて食べる気がおきない。
幸い空には雲がないので、太陽が上がってくれば昨日のように好天が見込める。あと少しだけガマンしようとすぐにリスタートする。
ここから超絶長く単調な林道が始まる。眠気が襲ってきて林道をフラフラ歩く。
ここのポイントは山頂を下るとギザギザのノコギリ状トレイルが続く。千貫峠で経験しているのでもう楽観せずに進む。
激下って雨乞山の最終CPで町並みが見えて少しホッとした。あとは下りのみ。しかし、さらっさらの見たことがない路面で超激下りはHOKAを履いていると捻挫しそうだった。
ようやくラストのロードに入って走れるけど、脚には余裕なし。
ゴールで待ってくれている仲間に感謝をしながらロードを下る。
ラストの橋を越えるも横山さんが「おめでとう」っておもいっきりハイタッチしてくれてそのままゴール。
ここで、ボクの120km(+10km)がようやく終わった。
-----総括-----
コース設定は秀逸
標高の高い大きな山は日中に、低山は夜間に。トップランナーのゴールは夜間でも一般ランナーは日中にという配慮が伺われる。
すべての山が厳しく、楽な山はなかった。
走りたいけど走れない登りばかり。
ミスコースの看板等には文句が言いたいけど、ミスしたボクが悪いので仕方なし。 欲を言えば矢印看板にエスケープ用等と書いて欲しかった。でなければ正規ルートと勘違いし、遭難してしまう可能性ある。
問題は運営方法で、医師の診断書の提出の有無や後夜祭が急になくなったり、MtoKのドロップバッグを直前に設置したりと混乱が大すぎ。
あと地元のホスピタリティは高くない。エイドもOSJ+おにぎり一つって感じ。さすがに水は飲み放題だけどスポーツドリンクはコップ一杯だけという、高額なエントリーフィーの対価としてはちょっと残念。
繰り返すけど、コースはいい。こういうトレランレースでなくて山岳レースは今後も継続して欲しい。
ただ、悪天候だと完走率は著しく低下し、ケガ、リタイヤ者が続出すると思われるコースなので、エントリーする選手は本コースの厳しさを理解して参加しないといけないと思う。
批判が何かと続出している本レース。
コース整備をされている方のブログをレースの情報収集のために以前から読んでいたけど、ボランティアの方々も苦労の続出していたよう。
無事に走り終えた今、夏前からずっと一生懸命整備されている方に感謝の念でいっぱいです。(のすたる爺や http://byeryoza.mo-blog.jp/log/)
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